ウェブ向けアトリビューション レポートの概要

広告クリックや広告ビューが、いつコンバージョン（広告主サイトでの購入など）につながったのかを測定します。

対象

アトリビューション レポートの基礎と、基本的なコンセプトについて説明します。技術的な詳細については多くは取り上げません。

• 広告または広告テクノロジーに携わっている方は、サードパーティ Cookie を使用して実現される機能を、この API で利用する方法について学びます。API のユースケースをご確認ください。レポートの作成の仕組みについてより詳しく説明されています。
• デベロッパーやソフトウェア エンジニアの方は、完全なシステムの概要またはこの API に関するテストとディスカッションをご覧ください。

コンバージョンの測定に広告テクノロジー プラットフォームを使用している広告主とパブリッシャーは、この API を直接使用する必要はありません。広告テクノロジーがこの API との統合を予定しているのであれば、アトリビューション レポートの機能を理解しておくことをおすすめします。

Attribution Reporting API とは

現在、広告コンバージョンの測定にはサードパーティ Cookie が多く使用されています。サードパーティ Cookie はサイトをまたいでのユーザーのトラッキングに使用されることがあり、ユーザーのプライバシーの妨げになるおそれがあるため、ブラウザではアクセスが制限されています。

Attribution Reporting API では、サードパーティ Cookie を使用することなくコンバージョンを測定できます。

この API を使うことで、広告主や広告テクノロジー プロバイダは次のようなケースでコンバージョンを測定できるようになります。

• 広告クリックおよび広告ビュー。
• サードパーティ iframe の広告（サードパーティの広告テクノロジー プロバイダを使用しているパブリッシャー サイトの広告など）。
• ファースト パーティ コンテキストの広告（ソーシャル ネットワークや検索エンジン結果ページ上の広告、またはパブリッシャーが独自の広告を配信している場合など）

これらの用語や概念についてなじみがない場合は、プライバシー サンドボックスの用語集をご確認ください。

API を試す

• ローカルのブラウザでテストします。フラグを設定し、特定のテスト機能を有効にするよう Chrome ブラウザに指示します。

API のテストについて詳しくは、アトリビューション レポート: テストとディスカッションをご覧ください。

API の変更

• API の変更点を確認してください。
• 2023 年上半期に Attribution Reporting API を公開した目的をご確認ください。

提供状況

ユースケースと機能

Attribution Reporting API には 2 種類のレポートが用意されており、異なるタイプの分析情報が利用できます。レポートは広告主やサードパーティの広告テクノロジー プロバイダに送信できます。これらの 2 種類のレポートは同時に使用でき、互いに補完し合うものです。

• イベントレベル レポートは、特定の広告クリックや広告ビュー（広告側）を、コンバージョン側のデータに関連付けます。コンバージョン側のデータは非常に限定的なもので、ノイズが付加されています（つまり、ごく一部のケースでは実際のレポートの代わりにランダムなデータが送信されます）。こうすることでサイトをまたいでユーザーの ID が結合されないようにして、ユーザーのプライバシーを保護しています。追加のプライバシー保護として、レポートの送信を遅延させています。
• 概要レポートは、広告側の特定のイベントに関連付けられません。イベントレベル レポートよりも豊富な、忠実度の高いコンバージョン データが提供されます。プライバシー保護技術を組み合わせ、サイトをまたいで ID が結合されるリスクを軽減しています。

イベントレベル レポート

イベントレベル レポートでは、広告クリックや広告ビューは大まかなコンバージョン データに関連付けられます。

イベントレベル レポートは次の用途に適しています。

• 最適化。「ROI を改善するにはどうすればよいか」といった質問に対する答えが得られます。レポートで広告側の一意の ID を利用できるため、特に広告の配置を最適化するのに役立ちます。機械学習モデル用のトレーニング データも提供できます。
• 大まかなレポートでは、コンバージョンに関するごくわずかな情報しか必要ありません。現在の上限は、クリックの場合は 3 ビット（つまり、コンバージョンは 8 つのカテゴリにいずれかに割り当てられます）で、ビューの場合は 1 ビットです。コンバージョン側の詳細なデータ（具体的な価格やコンバージョンの日時など）のエンコードはイベントレベル レポートではサポートされていません。
• 不正行為の検出。一部のレポートのデータは、スパム操作や無効なアクティビティを特定するために使用できるパターンの把握につながるので、広告の不正行為の検出や分析に役立てられます。

概要レポート

概要レポート（旧称: 集計レポート）はより詳細なコンバージョン データを提供し、クリックデータやビューデータをコンバージョン データに結合する柔軟性を備えています。

詳しくは、概要レポートについての説明をご覧ください。

概要レポートはレポート作成のユースケースに最適です。「ROI はどの程度ですか」といった質問に回答するのに役立ちます。

概要レポートを使用した最適化（イベントレベル レポートではコンバージョン データが大まかすぎてサポートされていない購入額の最適化など）については、現在活発に研究が行われています。

その他の機能

Attribution Reporting API のその他の機能を紹介します。

• アプリからウェブへのアトリビューション: アプリで広告を表示またクリックし、ウェブでコンバージョンを達成します。

ブラウザのサポート

• Firefox と Edge は、シグナルを共有していません。
• Safari と Webkit は否定的で、Private Click Measurement という広告コンバージョンを測定する別の API を提案しました。

2 つの API には違いがありますが、Chrome と WebKit は、属性名やレポートの JSON 構造を揃えるなどして、デベロッパー エクスペリエンスの簡素化に向けオープンに協力しています。

Attribution Reporting API の機能セットは、Safari と WebKit の提案する Private Click Measurement API の機能セットとは異なります。主な違いとして、Attribution Reporting API には次の特徴があります。

• ビュースルー測定がサポートされています。
• イベントレベル レポートを利用できます。
• 概要レポートにクリック / ビュー側とコンバージョン側の両方の豊富な情報が含まれています。
• サードパーティ（広告テクノロジー プラットフォームなど）がパブリッシャーや広告主に変わってレポートを受け取ることができます。

ブラウザの設定

• ユーザーは chrome://settings/adPrivacy のユーザー設定で API をオプトアウトできます。
• シークレット モードでは API は有効になりません。
• サードパーティ Cookie が無効になっていると、API は有効になりません。

サイトによるアクセス制御の仕組み

API が利用できるブラウザであれば、トップレベルのドキュメントやスクリプトと、同一オリジンの iframe の両方で、どのサイトでもデフォルトで API を利用できます。

任意のサードパーティ（トップレベルのアクセス権を持つスクリプトを使用してページに追加されていないクロスオリジンの広告 iframe など）は、パブリッシャーや広告主に通知することなく API を使用することはできません。これらの iframes では、権限に関するポリシーで Attribution Reporting API を明示的に有効にする必要があります。

<iframe src="..." allow="attribution-reporting"></iframe>

ページにクロスオリジンの iframe を追加するトップレベルのアクセス権を持つサードパーティも、権限に関するポリシーで Attribution Reporting API を有効にできます。

サイトは HTTP レスポンス ヘッダーを送信することで、トップレベルのアクセス権を持つスクリプトを含め、すべての関係者の Attribution Reporting API を無効にできます

Permissions-Policy: attribution-reporting=()

Attribution Reporting API の機能

Attribution Reporting API では、互いに関連付けられる 2 つのイベントを測定できます。1 つはパブリッシャーのウェブサイトでのイベント（ユーザーの広告ビューや広告クリックなど）で、もう 1 つはその後の広告主サイトでのコンバージョンです。

イベントレベル レポート

概要レポート

概要レポートは次のように作成されます。

• ユーザーが特別に設定された広告をクリックするか表示します。ユーザーのローカル デバイス上のブラウザが、事前に指定されたアトリビューション構成データとともにこのイベントを記録します。
• その後ユーザーがコンバージョンを実行すると、ブラウザがこの詳細なクリック イベントまたはビューイベント（アトリビューション ソース イベントと呼ばれます）と詳細なコンバージョン データ（アトリビューション トリガー データと呼ばれます）を照合します。取得される詳細の項目は広告テクノロジー企業によって事前に定義され、ブラウザは広告テクノロジーによって定義された特定のロジックに従います。ブラウザはこのデータを集計可能レポートに出力します。
• 集計可能レポートはブラウザによって暗号化され、広告テクノロジー サーバーに送信されます。集計可能レポートは広告テクノロジー サーバーから集計サービスに送信され、概要レポートが作成されます。
• その後、広告テクノロジーが概要レポートを利用できるようになります。概要レポートでは、イベントレベル レポートほどの遅延は行われないことに注意してください。

詳しくは、概要レポートについての記事をご覧ください。

プライバシー

サードパーティ Cookie とは異なり、広告会社は Attribution Reporting API を使用することで、サイトをまたいで個人のアクティビティをトラッキングすることなくコンバージョンに関する分析情報を得ることができます。

ボブという人物を例に取ってみましょう。ボブは news.example でニュースを読んでいる最中に広告を見ました。1 週間後、ボブは shoes.example で靴を購入しました。

現在、このコンバージョンは、クロスサイト ID として使用されるサードパーティ Cookie によって追跡されています。サードパーティ Cookie を使うことで、広告テクノロジー企業は news.example や shoes.example でのボブのアクティビティの詳細について、多くの情報を得ることができます。広告テクノロジーはこれらの情報を統合してボブの詳細なプロフィール（ボブの住んでいる地域、閲覧傾向、news.example でのお気に入りの記事など）を作り上げることができます。このプロフィールには shoes.example での購入情報、アクティビティ、クレジット カード情報などが含まれることもあります。このようにサイトをまたいで情報を結合することで、広告コンバージョンを測定しやすくなります。しかし、これはユーザーのプライバシーの妨げとなります。ボブのアクティビティは、サイトをまたいで詳細部分までトラッキングされています。

コンバージョンを測定するには十分ですが、サイトをまたいでボブのアクティビティを詳細までトラッキングすることはできない、少量の情報が結合されます。ボブの news.example でのアクティビティと、shoes.example でのアクティビティは分けられたままです。

それぞれのレポートタイプの保護対策

イベントレベル レポートでは、広告側の ID に少量のコンバージョン側のデータが関連付けられます。サイトをまたいだコンバージョンに関する情報は提供されますが、コンバージョン側の情報は非常に大まかなものなので、サイトをまたいでユーザーの ID が結合されることはありません。

概要レポートでは、詳細な分析情報を確認できますが、あくまでも集計されたレベルでの情報です。これらの集計可能レポートの内容は広告テクノロジーに送信される際に暗号化されるため、広告テクノロジーは集計サービスを使用しない限りレポートから情報を取得できません。集計サービスでアクセスできるのは、ノイズが付加された集計のみです。

レート制限などの追加のプライバシー保護は、イベントレベル レポートと集計レポートの両方に適用されます。

詳細: イベントレベル レポートとプライバシー

イベントレベル レポートでは、次のプライバシー メカニズムに従い、サイトをまたいでユーザーをトラッキングすることなくコンバージョンの分析情報が提供されます。

• クロスサイト ID は使用せず、サイトをまたいでの閲覧アクティビティの詳細がデバイスから送信されることはありません。
• イベントレベル レポートでは、広告側（news.example）の 64 ビットの情報が、コンバージョン側（shop.example）の 1 ビットまたは 3 ビットのみに関連付けられます。64 ビットは個々のユーザー ID にマッピングするには十分な情報ですが、これらの 64 ビットをリンクできるサイトをまたいでの情報は、1 ビットまたは 3 ビットというごくわずかなものであり、ID を保持することはできません。
  • 広告側の 64 ビットは新しい情報ではありません。現在、ユーザー ID はすでに広告側で利用可能になっています。news.example や adtech.example は、news.example での特定のユーザーのアクティビティをすでに把握しています。
• 不正行為やクロスサイト トラッキングを防ぐため、追加の保護対策が適用されます。
  • レポートは遅延されたうえで送信されます。
  • コンバージョン データにはノイズが付加されます。一定の確率で偽のレポートが作成されます。
  • 関連付けられるコンバージョン レポートの数は、クリックごとまたはビューごとで制限されています。

詳細: 概要レポートとプライバシー

概要レポートでは、クリック イベントやビューイベントは詳細なコンバージョン データに関連付けられます。次のプライバシー メカニズムを使用し、サイトをまたいでユーザーをトラッキングすることなくコンバージョンの分析情報が提供されます。

• クロスサイト ID は使用されません。
• それぞれのアトリビューションは、結果の概要レポートに複数のコントリビューションを設定できます。任意のユーザーが特定のクリック（またはビュー）とコンバージョンに複数のアトリビューションをトリガーできます。
• データは多くのイベント（多くのユーザー）のレベルまで集計され、個々のイベントを正確に確認することはできません。集計されたデータを確認すると、詳細レベルが上がるにつれて、そのデータの関連するノイズも同様に増加します。多くのイベントやユーザーを集計したデータのスライスはより精度が高く、有用性が確保されます。
• 詳細なクリック イベントやビューイベントと、詳細なコンバージョン データを関連付ける未加工のレポートは暗号化され、広告テクノロジー企業は内容を確認できません。このデータの内容を確認できるのは集計サービスだけです。
• 不正行為やクロスサイト トラッキングを防ぐため、追加の保護対策が適用されます。
  • レポートを送信する際の遅延はランダムです。
  • 異なるデータのスライスについてのクエリにはレート制限が設定されます。

意見交換とフィードバックの提供

• この API に関する質問がある場合は、API リポジトリでイシューを作成してください。
• アトリビューション レポート メーリング リストで API に関する最新情報とお知らせをご確認ください。
• 技術的な質問がある場合は、Chromium のバグを報告してください。
• 実装、統合、一般的なベスト プラクティスに関する質問がある場合は、プライバシー サンドボックス デベロッパー サポート リポジトリでイシューを作成してください。